問題作
とりあえず語りしろは多いｗ
やはりネタバレ不可避
ざっくり言うと問題は謎を投げっぱなしで終わってることです
どうも単に開発時間が足りなかったみたいですね
この作品、素直に表面的に見ると
過去から元恋人たちを救い出す試みとそこに乱入した復讐者の物語で
そう見る分には(説明不足感はあれど)まあだいたいこんな感じかなと
把握することができる、一応の形になってると言えます
しかし実際は過去の凄惨な事件の真相や
妹を殺した超越的な存在への復讐がさらに背景にあって(ダンガンロンパ3みたいな？)
そこが描き切れなかった部分な訳ですが、
それならそれで最後足早に説明しちゃうとか
思わせぶりな伏線部分はカットするとかやりようはあるのにそうしなかったのは
切り捨てる設定への未練・考察が盛り上がるかもというさもしい計算のどちらであれ
ユーザーに不親切な態度と言わざるを得ません
(Never7みたいに後から完全版出せばいいと思った可能性もあるな)
ってことでまず印象は良くないです
ともあれ語り得ぬことには沈黙するとしまして
(妹云々に至ってはプレイ後にネット見て知ったレベルだし)
受け取ったままの、主に恋人を助ける物語としての感想を語りたいと思います
infinityシリーズとして見ると
我慢して我慢して最後いづみキュアシナリオでやっと読み応えに出会うNever7、
同じく終盤盛り上がって評価はべらぼうに高いが中盤まで絶望的に退屈なEver17に対して
本作は逆に序盤が面白く、あとは失速していきます
先述の謎が明かされないという点を除いても普通にだるい、
かまいたちの夜の雪山さまようシーンの不毛感が延々続きます
実際遭難して何日も過ごしたらこんな雰囲気なのかもしれないが
寒い、食糧がない、小屋を出よう・やっぱり戻ろうだけで引っ張る絵面はしんどい
基本このシリーズ文章が冗長なんだな
マンガで作画を分業するみたいに
ストーリー考えた後で文にするのはライター雇った方がいい
描写で魅せる力があれば地味なシーンでも持ちます
一方の施設パートもいきなり新しいキャラ登場して一気に解説しちゃうのは
情緒もへったくれもあったもんじゃない、完全に打ち切りの畳み方
(時間が足りないしわ寄せがここに行ったか？)
そもそも初期設定からぶっ飛んでるんです
未成年凶悪犯罪者の情報を
権力者のコネも国に認められた特別な才能もない学生の小娘が入手してて
特に教授の先導などもなく単身会いに乗り込んでく
収監されてる施設は管理する人間がいない、外部との連絡手段がない、
しかも中に4人しかいない、いやそのうち3人(3.5人)は外から来た奴らだから
元は犬伏景子の1人暮らし状態だったのか？？
ってな具合にリアリティがグズグズなので
いくらサングラス男が転移装置について知的・科学的に説明してくれたところで
砂の土台には何も建たないんだよなあ
転移が起こることでプレイヤーへの情報開示引っ張るのも
1、2度なら効果的にじらせるかもしれませんが
しつこく何度もやられると｢露骨に作者の都合で動いてる世界だなあ｣と冷めるばかりです
これは428でもちょっと思ったかも
別の意味で謎だったのは
声が身体じゃなく内面の方と一致してたことですね
声帯も一緒に転移するなら誰か言うはずですからそういう演出なんでしょうが
入れ替わりという素材の一番美味しい部分殺してますよ
百歩譲って子安に女言葉しゃべらせるのが嫌だったなら
主人公だけボイスなしっていうADV常套のやり方があるじゃないですか
いくら自分に聞こえる自分の声が違うからってこれは完全に悪手です
システム面に関しては既読スキップにオートのクイックセーブ、ショートカットと
一見親切で快適
ただゲームの構成は街の劣化コピーだなあと思ったら
もろコンセプトにあったらしい(byウィキ)
というのも、街やさらに辿ればEVE burst errorなどは
｢複数のシナリオを同時に進める中で、1つ行き詰まったら別のシナリオで行動を起こして
その障壁を取り除く｣ことが魅力となるのに対して
本作は(おそらく)演出の都合上同時進行ではなく
ココロ編をまとめて見た後サトル編をまとめて見る仕様となっており
正規のエンディングまでいった後、バッドエンドを回収するため
あえてゲームオーバーになるルートを選び、もう1人の側から死を確認するという
まるでデバッグのような事務作業を強いられることになります
本来本筋から外れた遊び要素にあたるものではありますが
不幸にも本編が謎放置のまま終わるため
解明の手掛かりを求めてバッドエンド回収に乗り出したプレイヤーも多かったことでしょう
(なお断片情報がちょっと増えるだけで内容は非常に少ないです)
せめて街のように時間指定でショートカットできたり
フラグ管理をセーブデータごとに分けなかったりしたら幾分スムーズになったと思うと
システムも手放しで褒められたものではない
さて、実はこの作品の最初の印象かつ結構目を引く話を最後に回しました
今見たら多くの人が同じことを感じると思います
ずばり｢これ、『君の名は』だ｣、と
物語の軸になる現象がモロ被りなんです
もちろん新海誠がパクったなどと言うつもりはありません
そもそもよくある素材ですし
創作活動が何かしら過去の作品とまったく類似しないことは不可能と言っていい
ただあれだけ注目された、多くの人が見たというのに
Remember11みたいだとか思い出したといった声がろくに出なかったことが不憫…
考察の余地を作り一定の議論を起こしたのかもしれませんが
あの名作Ever17の系譜としては十分な認知を獲得するに至らなかったと
(恋愛ゲーム感は薄い)
正直おすすめするゲームではないですｗ
・答えがなくても考察を広げるのが好き
・ADVやEver17がすごく好き
・君の名はが好きすぎて別の切り口を見てみたい
あたりの人なら手を出してもいいかな、自己責任で
ぶっちゃけプレイヤーが勝手に深読みして｢考え悩ませるのが狙い｣とか言ってくれてるから
そういうことにしとけばいいや！ってのが実状だと思います
完全版が出ないのは考察が本家超えちゃったせいじゃねーかな
ちなみに上記の
｢君がいなくなって取り戻すために多世界の海へ漕ぎ出す｣的な解釈をすると
君の名は以上に前前前世の歌詞にマッチするんですよね(ふしぎ！)
まあ主題歌が主人公視点じゃないレコンキスタみたいな形になっちゃいますが。
