『グラスホッパー』

映画・ドラマ
原作
映像的でキャラが立ってるので、複数視点で展開するのに合ってる
文学的な複数の一人称視点でそれぞれの味がある(そのせいかちょっと読みにくい)
無関係の3人が集まっていく、最後に謎が明らかになる等きっちり楽しい

ハードボイルドだが鯨(主人公の1人)の見る亡霊が他人にも見えたり
鯨の知らない情報までくれたり、明らかに幻覚の域を超えたファンタジー
鯨と押し屋の対決が曖昧でラストの盛り上がりには欠ける
殺し屋たちが三者三様で雰囲気があって好き。映像でも見たくなる

そしたらちょうど映像化されてたので続けてそっちも視聴
尺の都合でシナリオがちょいちょい変更
オリジナル要素(嫁と子どもの接触)もありそれ自体は問題ないものの
変更に伴って原作の魅力がぽろぽろこぼれ落ちた感じ

まず主人公鈴木
原作では組織を自力で探し当て復讐に燃え
それを横取りされたと憤り
押し屋宅に潜入奮戦するが
映画では他人に誘導されて組織へ
押し屋に「代わりに殺してくれてありがとう」
押し屋宅にも呼ばれてちょっといただけ、と
全然主体性がなく影が薄い
殺し屋3人(映画では実質2人)キャラ立ってるんだからもっと前に出なきゃ霞むぞ

人のいい気弱な役で生田斗真じゃアクが強すぎそうなところ
見事に消しててイメージにはまってた
でもそうなるとこんな影薄い役に無駄遣いなのでは

次に鯨
原作の最大目的である押し屋に絡まないため
ただ人生に迷ってるフリーターみたいになってしまった
大勢相手に立ち回るわ蝉とも立ち回るわで
自殺させるというせっかくの持ち味が霞んだ
不自然でも見た目の派手さ求めてアクションシーン入れるからこうなる

そして蝉(ナイフの殺し屋)
こいつの生き様がこの作品の雰囲気作りに大きく影響してたのに
残念ながらあんまり描かれなかった
岩西との嫌悪しつつ依存する奇妙な関係がただの信頼する相棒に変わって
なんか薄っぺらくなった

山田涼介はクールな演技で個人的にはDQNな馬鹿っぽい蝉が見たかったな
たぶん鈴木と蝉の配役逆の方がしっくりくる
大勢相手に立ち回るのもリアル・ハードボイルド路線には邪魔
アクションが本当にその作品の魅力かどうかはよく考えてほしいところ

ついでに比与子(組織の上司)
キツい性格に改変された
組織の凶悪さを表現させたかったのかも
でも映画では寺原父が威圧感出しまくってるのでその役割は不要
非合法な組織だからという安易な改変か。名前にも合わない
ただ菜々緒ありきならこのキツいキャラでいいやw

一番致命的なのは押し屋が空気だったこと
原作の押し屋をめぐって主人公3人が交錯していく魅力に対して
映画は鈴木の話と鯨・蝉の話がほとんど交わらず
もはや別々の物語になってしまった
映画単体で観ると短編2本に感じるのでは

シナリオやりくりして原作の枠はなぞりつつそれぞれカッコいい
ただこの映画の魅力は何だっていうね
先述の邪魔ってことに目をつぶれば鯨と蝉の殺陣は見応えあるかな・・

結局もっと尺確保して素直に原作なぞるのがベストだったんじゃね
原作ファンなら違いを見比べて楽しむのもありか。

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