『魔王』

カリスマ政治家が出現してナショナリズムが過熱し
憲法改正に向かってく社会における
超能力を授かった兄弟の物語
魔王とはファシズムへ向かう狂気を指すのか

それぞれの能力を手探りで駆使するプロセスが楽しい
本作はだいたいそれくらいです

あとがきに「政治的意図はない」と予防線張りにいってますが
わりと印象は露骨
バランス・両論の形を提示してみせつつも
作者がどっちに肩入れしてるかは明らかです

百田尚樹の本だろうと面白ければ普通に楽しむし
別に伊坂幸太郎が極左的な思考の持ち主でも構わないんですが
プロの作家ならテーマをもっと上手く小説に落とし込んでほしい

図書館戦争とか表現の自由を核に盛大にエンターテインメントしてるじゃないですか
これはもう行政の啓発ビデオや進研ゼミのマンガの類ですよ
たとえばヤンキーが突然世界の貧困や環境問題に関心持ちだしたら
「すばらしい」と感心する前に「何があった?!」と戸惑うでしょ(偏見)

芸術方面の人は理想を重視する傾向があるとはいえ
○○につながる可能性があることをやたら警戒する一方
現実に起こってる問題に無頓着なのはどういう了見なんでしょうねー

タイトルとURLをコピーしました