『プラットフォーム』

映画・ドラマ

すごい作品を見つけた

吹き抜けの牢みたいな塔の各階に人が閉じ込められてて
毎日食べ物が上から順番に降りてくるの
(階層は定期的にシャッフルされる)
下の層まで行き渡るためには配分を考慮する必要があって
でも皆他人を気にしてられないから好きなだけ食べちゃうのね
つまり下の階を割り当てられるほど餓死リスクが高くなる

端的に言うと蜘蛛の糸みたいな世界
シンプルで力強いメッセージを放つ、蜘蛛の糸系デスゲームだ

この手の作者都合で作られた世界観の場合
面白い展開になるのは当然だろ、とハードルが上がるんですが
文句なしに超えてくる
“この設定であれば描くべきもの”をこぼさず拾ってくる
ルールを全部(視聴者に)口頭で伝えるんじゃなく
実例で“こういうことができるよ”を見せる、そして後々回収する
計算してきれいに組み立てたパズルのような美しさがある

描きたいもののための舞台を用意して
“この世界ならこんな展開が生まれるよね”という理にかなったサイクルを感じるの

その周到さを世界観の理由づけにも発揮したら
もっと名作になれたのに、とは思ってしまう
クリアな謎解きや解説もなくてなんとももったいない

たとえばカイジの世界にはリアリティのため
債務者の整理や見せ物といった建てつけがある
それこそ蜘蛛の糸だってお釈迦様や地獄といった建てつけが一応ある

本作はすがすがしいほどそこ放棄してるんだな
誰が何のために作ったシステムなのっていう
まず収容される人はどうやって決まるのか

収容者に反省を促すとか学ばせるのが目的にしては
管理者が介入しなすぎで人死にすぎなのよ

裏社会の有力者たちの娯楽としては
餓死を組み込んだゲームはテンポが悪すぎる
(編集をすごい頑張ればいける?)

あるいは私人の気まぐれによる壮大な実験であれば
管理が雑な部分は筋が通り得る
しかし明らかに私人の気まぐれで実現できる範囲を超えてる
このへんの特徴はなれの果ての僕らと共通するかな

本作に属性が近くてちゃんと建てつけた例としては
国家権力を動員した規模感と
お山の大将の暴走による理不尽を用いた無頼伝 を思い出す
やっぱり福本伸行だ

まあ説得力のある設定を求める視聴者の方が少数派なのかも
Sawなんかも外側の話は印象に残ってない(記憶が古くてはっきりとは言えない)

何にせよ見たら忘れない、濃厚な時間を約束してくれる映画です
人肉食ったりがNGじゃない人はぜひ。

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レビューに「全員日本人ならうまくいきそう」ってあって笑った

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