『なれの果ての僕ら』

マンガ

同窓会と称して集められた元クラスメイトたちが
監禁され実験にかけられる中で非日常の人間性を露呈させてく
内面に踏み込んだ感じのサスペンス、なのかな

まず大枠に無理があるの
学校を監禁可能な施設に改造したり毒物がジャスト10分で発動したり
善性を問うゲームとしてもいわゆる囚人のジレンマのように
善性だけでクリアできる作りになってない粗さ

お察しのとおり(?)スタンフォード監獄実験(ウィキ)は念頭にあって
劇中でも言及されますが
こちらは役割による縛りが強くなく
ただ極限状況で理性が壊れただけに見える

しかもやり過ごせばいずれ助けが来るのを見据えながらなので
「あの状況なら仕方ない」というより
元々クズだったんだろうな」に見える
実際余命宣告された人が犯罪に走ったニュースとか聞かないし

ダンガンロンパカオスチャイルドにある、
本編で殺し合った仲間たちと楽しく過ごす追加モードを本作でやれる気がしないのは
事件前から潜在的なクズや非道のストック・不幸の種が集まってるからでしょう
誘導されたからしょうがないとはちょっと言えないわ

結局○○だけ殺して「さあ僕を撃ってみろ」ですべて済む話だったので
実験や集められた人たちのほとんどがついでの遊びってことになって
事件の意義そのものがまるごと否定されちゃうのね
これはひどいです

ただこのリアリティや意味の部分に目をつぶれれば実は面白くて
緊張感と見どころがちゃんとある
個人や大衆の弱さ卑劣さあるあるをオールスター式に散りばめてくる点は
湊かなえ系の社会派カラーで
読者に「自分もそうだな」と自覚させる意地悪さもあります

これでドラマが組み立てられ
また冒頭で首謀者含め死者の人数や状況・日程が明かされるため
グズグズ引っ張ってダレない上
後日個別に取材を受けるシーンが挟まれると「こいつは生存確定」と
事件の前後から挟む形で全容が見えてくる

あと主人公ポジションのネズがいい奴で
口だけじゃなく自分を犠牲にして行動できるから
多少鼻についても差し引きかなりプラスだと思ってたんですが
感想見ると彼への反感が結構あって
劇中で反感買ってるのはリアルな反応なんだなと気づけるw

そして普通の子が犯し得るような逸脱から
軌道修正できたケースにはちょっと胸が熱くなります

骨が腐るまでに続いて殺伐とした話です
きっと構想の段階で
学校を脱出不能の宿泊施設に改造し、毒ガスや銃を入手し
そこそこ体術をこなせる高校生
という設定にためらいはあったと思う
彼でなくこの世界の科学の方を上げ底する手もあったはず

大枠は破綻してるが内容に魅力がある点と
人間の陥りやすい悪(から来る問題)をモチーフとする点で
わりとリアルアカウントと共通するものを感じる中、
物語の前提を実現するために個人をドーピングした本作と
科学技術をごっそりドーピングしたリアアカの対比は興味深い

ハイテク機械や仮想空間を駆使すればエッセンスはそのままに結構感触が変わる
リアリティ不足による脱落者を減らせるかわりに
感情を揺さぶる鮮度が薄まるってとこでしょうか

なおこれ言ったら顰蹙買うのかな
正直みきおどころか母にもそんなに嫌悪感ないんだなあ
個人的に保身のない人間に甘めってのもあるけど
クラスメイト側の不快な人間・行動の数々が強く印象に残ったせいかも

裏社会のまともな人より身勝手な一般人の方が醜く感じたザ・ファブル
を思い出さないこともない

そういや見た目・ポジションとも妙にコニー(進撃の巨人)っぽい坊主がいて
異常の中だけに“普通であること”が読者の癒しになります
あの恐ろしい世界を戦ってきたんならいざってとき頼りになるはず。

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