『先生の白い嘘』

マンガ

性的な問題を抱えた人たちのどろどろした群像劇
読むと精神的ダメージを受けるタイプの作品です

昨今よく耳にする意思確認なしの行為はアウトといったテーマの
陥りやすい態度や狡猾な手口について物語を通じて教えてくれる系かと思ったんですが
ちょっと、いやだいぶ荒っぽかった

たとえばDVの場合
まず親密になってから徐々に本性を現して暴力が増えてくイメージじゃないですか
初対面で暴力から始まった相手と親密になって継続的DV受けるパターンもあるの?
正直想像しにくい
まあストックホルム症候群で説明できなくもないのか

対比として思い出したのはぼくらのの畑飼ね
あっちは力でねじ伏せないし
性に執着して見えないのにわざわざ大きな危険を冒してる点はリアルに感じないけど
自分のテリトリーに引き込む巧妙さや
“獲物”と真剣交際相手の格の違いははっきりしてた
こういう悪い奴いるかもと思えるんだな

こっちの性犯罪マンは雑過ぎて
常習なのに捕まってないことに違和感が生じてしまう
1回たまたま都合よくいくくらいあるかもしれんけど

主人公が軽薄な女と仲良くなったのが謎だし
そいつが公共の場で直球の猥談垂れ流してるのも変だし
職場の高校は性こじらせた奴だらけで気持ち悪い

結局詰め込み過ぎなんだろうな
せっかく個々の考察・言葉やエピソードは真に迫るものがあっても
密度が過剰だと作り物に見えて冷めるのよ

殺人犯の心理や闇を深くえぐり出した、すごい!と思ったら大量発生してて
人物相関図が殺人犯だらけみたいな状態です
さすがにジャンル変わってきちゃうでしょ

詰め過ぎのせいでリアリティが霞むという点ではハコヅメにも似た傾向がある
ただハコヅメは圧倒的な笑えるネタと勧善懲悪エンタメをやってるから十分勝負できる

ざっくり言うと創作物の価値ってたぶん
楽しめる・感動する・ためになる、の3本が柱で
どれにも当てはまらないと誰得作品になるんです
本作の場合リアルなドキュメント系、
知って、注意・対策して、撲滅しよう…なためになる路線でしか勝負できないと思うのね

湊かなえ作品なんかでも持ち味の人間のリアルな醜さが強調過剰だと
ウソっぽく見えてしまうことがある
それでもミステリ的な味わいがあるから安定して楽しめる

一応実写原作狙う手もあるけど
テレビで放送できるレベルの表現に抑えたら最大の武器であるエグみが死ぬ
一応作るだけ作った、的なぬるい仕上がりになるかと

どうしても全部描きたいなら
毎度登場人物の変わる短編連作の形にするべきだった
気を遣うべき繊細な題材が見せ物扱いでは見るに堪えないです

画力含め確かな腕があるのはわかる
調理方法が惜しかった。

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