『Nのために』

金持ち夫婦が殺された事件の直後の証言と
各関係者の述懐から全体像に迫る

意図的な出し惜しみでなく
それぞれ見える範囲が限られてる構図で
いったいどんな真相が…と気持ちを高めてくれるものの
ミステリ的な着地としてはなんだか煮え切らない感が残る

一方キャラごとのストーリーや人物描写にはおおいに見どころがあって
全然違うタイプの人たちが同じアパートに住んでる縁で仲良くなる画は微笑ましい
湊かなえ作品的な人間のネガティブ要素が抑えめで
むしろそれでも希望を見い出す前向きさの方が前面に出た印象
あんまり希望はない割に明るく読んだ気がするw

リアリティを考えると強引、そんなの『告白』からわかりきったこと

あとは突っ込んだ話
まず安藤は女だと思ったよ
でもプチ叙述トリックというより単に関係性が珍しいだけだな
男女の友情は存在し得るってやつだ

で核心に関わる部分、
夫人が杉下を「自力で生きたい人」と認識する一方
夫に手を出そうとしてると考えるのは矛盾がないか?
独立した人間になるとともに(財力関係なく)純粋に恋してると考えたのだろうか

まあ夫人自身は錯乱しててもおかしくないが
それを聞いた話者の独白部分で指摘があってもいいよなあと。

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