『変身』

脳の部分移植を受けた男の変身劇
馴染みの味気ないくらいシンプルなタイトルがこれには合う

往年のカフカや山月記の系列で
より感触が近いのがアルジャーノンに花束を(これも往年っちゃ往年か)
覚醒して有能になり過ぎた結果新たな気づきと歪みが出てくる

ミステリ色は弱いが
謎があって解明に向けて動く、事件や殺人が絡むため
こんな引き出しもあるんだなと感心します

テセウスの船に見るような人格の連続性、
私を私たらしめている根拠は何かといった哲学的なテーマが軸にあり
脳科学情報も動員しながら
ファンタジーな出来事をリアルにつなぎとめようとしてる印象
東野圭吾作品の中ではかなり超科学色が強い

心臓等の臓器移植でドナーの記憶が継承される系に比べれば
脳移植は幾分説得力が増すけども
直感で血縁を知覚したり人格を乗っ取ったりするのはなかなかの荒技

ひたすら崩壊していく物語なので
その意味で起伏に乏しいというか鬱展開一色な節はあるかな。

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