『愛国者の憂鬱』

坂本龍一と鈴木邦男の対談本
鈴木邦男は一水会という右翼の人で(たしかゴー宣で見た)
にしては全然圧を感じないというか
名前とプロフィール伏せたら右翼ってわからないレベルで意気投合してて

意見のぶつからない対談ゆえに
ん?と引っかかるポイントにしっかり論拠が提示されないのが難点
一言「そうですよね」で流れちゃうもん
加えてダブルスタンダードがひどい

メディアは極端な部分を取り上げるから鵜呑みにするなと言う一方で
日本が右傾化してる話で仮想する対象が極右的な人なのは何故だ
積極的に韓国を攻撃しろみたいな人が一体何パーセントいるのよ

「戦争で日本にほとんど非はなかったと言う人の様子がおかしいから
日本が全面的に悪かった」くらいの論調なんだな
オールオアナッシングじゃなくてさ、
功は功、罪は罪としてフェアに扱ってほしいってのが良識的な感覚じゃないの

さらに改憲して自衛隊を強化すると徴兵制・戦争に発展するという定番の飛躍
じゃあ世界の軍隊を有する国々は大半が軍国主義なのか

また海外派兵を認めたらアメリカの戦争を手伝わされると言う一方で
話し合って平和解決するのが外交だから非武装でいいと主張
だったらアメリカが戦争しそうになっても話し合って未然に防げるはずでは

そして何故その厳しい目を中国には向けないのか
実際やってきたこと、今やってることは見事にスルー
朝日新聞ですらもうちょっと警戒してるぞと

自衛のため戦うより死を受け入れるという価値観なら個人としては自由ですが
国家としてはあまりに無責任というもの

あと外国への強硬姿勢で政治家が人気とろうとするのはむしろあちらさんの歴史でしょう
こっちからふっかける理由はないし
政府要人が(言われてる内容の)半分も言い返してるのを見た覚えがない
先述のような“極端な人”が生じるのも主に反動なんだと思いますよ
ついでに島があるから争うという因果じゃなくて
先にある争いの意識が竹島という場を得て顕在化してるんでしょう

原発やめる件にしても代替案はナシ
昨今批判が高まる前から火力発電がCO2出し続けるのは明白な事実
温暖化にはつながらない説派なのか皆で省電力生活しましょう派なのか

それと核兵器が諸々有効なのは
攻撃されないばかりかやたら丁重に扱われてる北朝鮮が証明しまくってる

まあ「理想を言う人が必要」とのことですから
現実にそうしろという訳ではなく
言論空間の平均値を調整するのが本意なのかもしれません
(実は後藤輝樹もそういう節がある)
だからってダブスタが肯定される訳ではありませんが

なお二人とも直接や一人挟むくらいの距離で戦中戦後の重要人物たちと接してて
思想史的に貴重な情報は多いですし
文化等の掘り下げた話や音楽との関連は面白いです

伝統ったって日本の歴史全体の中では最近始まったようなもの、
そこはまさにその通りで
無条件に・陣営によって立場を決めるんじゃなく
是々非々で向き合ってくのが適切ですよね。

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