『誰か』

世の中の小説のほとんどは「誰か」の話な訳で
さすがにタイトル弱すぎんか

義父の運転手が自転車にひき逃げされて亡くなった件の解明のため
知られざる彼の半生を紐解いていく中で新たに過去の事件が浮かび上がる

自転車と歩行者の事故が注目されてそこから膨らませた作品でしょうか
事件性ゼロではないものの大掛かりな謎やトリックで魅せるでなく
主に人物の描写に焦点が当てられます

本の出版に向けて関係者に話を聞いて回る形になるため
一般人が警察を差し置いて大活躍する不自然さもなし

一般人といっても財閥の令嬢に逆玉した境遇はきわめて特殊ですが
庶民かつ常識人の感性をもってて共感はしやすい
言い換えれば個性は薄く
既読の『名もなき毒』に出てることにあとがきまで気づかなかった
(大筋覚えてるけど主人公は印象にない
ちょっと見直してみようかな)

お金持ちの素敵な嫁さんと結ばれつつ
権力争いに参加する資格も意欲もないため義父や義兄たちと良好な関係でいられ
文化的で安定した仕事まで用意してもらえるなんて
至れり尽くせりのいいとこどりじゃないかと思ってしまいますが
たぶん草食的で守りに入った発想だよなあw

でも文科系青年が穏やかに過去を辿る展開は
銀英伝の螺旋迷宮(スパイラルラビリンス)を思い出す
そのヤンは後に国家の命運背負わされますからね、
やっぱり恵まれた環境には違いない
探偵やルポライターの真似事に興じられる心と身体の余裕…

それを思うと不意に理不尽な暴言くらっても
「あいつらゆとりがなくて荒んでるんだろう」と寛容になれるんじゃないかな

ザ・人間模様悲喜こもごも
社会派人情系のドラマスペシャルにもってこいです。

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