『火花』

基本ヒット作であるほど「じゃあ自分が見なくてもいいだろ」と思う性質です
さらに太宰治ほか古典文学の面白さが全然わからない上
現代ものでも文学調は普通に読みづらくて苦手な性質なので
一生めぐり合わないはずの作品だったのですが
実家の売りにいく本の束に見つけて「じゃあ売る前に読むか」とあいなりました

いざ開けてみると案の定文学調は普通に読みづらかったものの
読みやすいように配慮してる・折り合ってる感じはあって楽しめました

文学的なもってまわった表現って俳句くらいの尺ならオシャレだなーで済むんですが
物語一本やられるとただただしんどいの
それも一人称視点でやるから「殿上人の遊戯か!」って突っ込みたいw

そのへんのハンデに対して
構図がオーソドックスなのと
題材がお笑いを通しててなじみやすいのと
芸人らしいウィットに富んだ会話が楽しいのとで、
これなら読める!と
文学しつつ私のような初級者にも入りやすい気の利いたバランスかと思います

ストーリーは内向的な芸人の主人公が傾いて生きる昭和芸人みたいな先輩と出会い
その姿を通してお笑いや人生を考えるメランコリックなもの

芸人って素ではボケないとか面白くないとも聞きますが
私生活も生き様すべて芸人であろうとする人なんて天然記念物なのかもしれません

おとなしい主人公が独特な人を観察するという定番のスタイルながら
ただの受け身ではなく主張するところはする、加えてよく内省することで
個性が死んでないのは良いですね

妙にうなずけたのは
視聴者の目が裏側まで行きすぎて素直に楽しみにくくなってる旨のセリフ

これってマジックもちょっとかじってると知らないネタでも
○○やってるなとかこのタイミングかなとか見方広がって楽しいんですよ
一方で知らない方が純粋に楽しめる節もあるし
皆が知ってる目線になったら業界全体が今までのフィールドを捨てて
次へ移らなければいけなくなるっていう
そんな話なんだろうなーと

バカ丸出しで訊くと結局火花って何だったんでしょうか(しっくりこないのよね)

あとこの表紙の絵見るとカルドセプトのスライムっぽいクリーチャー思い出す
…のは私だけでしょう。

追記
やっぱ一般のレビューは評価イマイチだな
文学に期待するハードルが高すぎるのか文学と大衆小説の区別がないのか…
かなりわかりやすいところまで下りてきてくれてると思うけどね

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