ご存じ新選組局長の近藤勇の、たぶん伝記
こういう本ってどれくらいの割合が事実なんでしょうね
本作については随所に当事者による後日談を挟んでおり
なるべく真の姿に迫ることを目指してる印象ではあります
ただわりと地の分も古めの重みある表現がベースなので
現在の目黒駅とかメッカみたいな話は避けて統一感出せばいいのにと
ちょっともったいない
近藤勇の重厚な、あるいは華々しいイメージ(だよね?)に対して
柔らかかったり虚勢を張ったりした側面も描かれます
幕府陣営といっても代々仕えた名家じゃなくいわゆる成り上がりの類で
名家組の不甲斐なさに呆れ腹を立ててますが
こいつらがダメだったからこそ出世・活躍する余地が生まれたとも言えるんじゃないかな
戦況が苦しくなるのに加えて立場からくる重責、同志と心が離れてしまう寂しさなど
読み進むほどに気分が重くなります
大将の慶喜なんかなんだかんだ余生を謳歌したよなあと恨めしく感じるものの
この動乱の中あっさり殺されてった名もなき人がいっぱいいた訳で
人から求められ真剣に悩むことができた人生は結構マシな方だったのかも
まあこうやって現代の私たちは好き勝手語れますよ
命や自由の価値を確かめる上でもやっぱり歴史を知ることは大事です
なるほど明治維新は藩同士の勢力争いに過ぎなかった
外国の脅威が迫ってるときに何やってんだ、と見える
実際その危機感は両陣営共有できてる、
とはいえ国さえ繁栄できれば我が藩・家はどんな扱いになっても構わないと
割り切ることはできない…
これが争いの種で、昔の人は視野が狭い、器が小さいように見えます
でもそれは広く情報を得られる、職業選択その他の自由がある、
様々な価値観に触れられる現代の視点だから言えることであって
そこを非難するのは気の毒ってものでしょう
遠回しにコロナ禍での争いに向けて言ってる部分もあるんですが
伝わってくれるかなあ。