『忘却バッテリー』

マンガ

キャッチャーが記憶喪失(多重人格)の高校野球マンガ
弱小校に辞めた名手が集まって再起から始まる形がH2タイプではあるが
圧倒的に作品数の多いジャンルだから何かしら似るだろうし
そこ気にしてもしょーがない

記憶がある状態だと賢い・ないとアホっていう切り換えが笑いになる上
初心者と上級者両方の視点を提供できる、初心者ボケも入れられる
ストーリーとキャラ設定が効率よくかみ合ってて無駄がない印象

また強すぎる者ならではの葛藤をはじめ心理面の描写が非常に繊細で
女性作者の野球マンガらしさを強く感じられる
(命を取る戦場でもないのに相手を気遣って病むお人よしは日本人くらいじゃないの)
ピッチャーの負担減やSNSとの関わり等昨今の情勢にも丁寧に対応してます

野球関連のブレーンが別の人だからか、踏み込んだ高度な話をする割に
浅めのちょっとした部分や表現にちょいちょい違和感がある
まあ全体の魅力を損なうものではないし
脆そうな儚げな作品のカラーに合ってるとも言える
堂々真っ向勝負ができる良作です

ただその先、
競合数多あるジャンルで突き抜けようと考えたとき
一言で伝えられるキーワード・最大の武器は何だろうという話にはなってくる

まず目立つのはギャグなんですよ
まじめに甲子園目指す作品では見ないレベルで崩してくる(泣くようぐいすくらいふざける)
(そういえば千石さんがやたら名前連呼されるな…)
ギャグマンガ日和みたいなノリがよく出てくるの

シリアスとおふざけの幅が広いこと自体は魅力になり得るけど
笑いを最大の武器に設定すると
メインの試合が緊迫して盛り上がってくるほど武器が使えず無個性になってしまう
野球のみの勝負になるとドカベンからバトルスタディーズ等の硬派路線に対して分が悪い
キラキラ度で勝る分ダイヤのAにも劣勢になる

おそらくBL素材としてはトップクラスに仕上がってるため
その層を動員できれば爆発するポテンシャルは持ってると言える
しかしさすがに「BLが捗ります」を看板として掲げる訳にはいかない

で、主人公の弱さもネックになってくる
強キャラの中埋もれずに頑張ってはいるが背負った過去の重さが違いすぎる
別人格との対話・再生・野球の楽しさ再発見までやられたらそりゃ主役食われるよ
競合との比較になったとき主役の分散はかなり不利

まあベースが凡人視点の方が伝わりやすい・入口を広げやすいというメリットはある
ナンバーワンよりオンリーワン志向でもちゃんと高みに到達してます

なお都立って明言しちゃうと
東京はあんまり少数強豪校突出型じゃないよな~と現実とのズレに意識がいってしまうので
ぼかして公立とか県立でよかったんじゃないか
東京のご当地ネタやる訳でもなし

全国(甲子園)で王者大阪に挑む形を作る上で関東って設定入れたくて
田舎はイヤで、激戦区だと公立新設チームの勝つリアリティ薄れるから
せめて東西分かれて競争緩和されてる東京にしよう~
って感じだったんかな。

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