『宮内庁定例会議』

登場人物 議長 新入り

(ざわざわ)

新:いやー私もついにこの会議に参加できるようになったか。感慨深い
議:おう新入り、よく来たな
 最初に大切なことを伝えておこう
新:はい
議:この物語はフィクションです。実在の皇族や省庁などとは関係がありません
 漠然とご覧ください
新:なぜそれを私に・・
議:そろそろ時間だ
 皆さん静粛に、
 これより我らが皇太子殿下のご成長をサポートする係の定例会議を始めます
 今回から新しいメンバーに加わっていただきます、どうぞ一言
新:あ、はい
 田中ですよろしくお願いします。
 皇族方のおそばにお仕えできることを大変誇らしく思います

(拍手)

議:さて皇太子殿下ももう中学生と難しいお年頃になられますが、
 つつがなくご成長いただけるよう柔軟に対応してまいりましょう

(そうだ!すばらしい!のヤジ)

新:・・
議:最初の議題は、殿下とスポーツについて
 皇族方におかれてもスポーツによって健康を維持し心身を豊かにすることが
 重要なのは言うまでもありません
 しかしこの頃殿下がご興味をもっておられるのが・・カバディです

(ざわざわ)

新:?
議:ええ、あのマイナーなわりに案外メジャーな
 そこでいかにして別の対象にご興味をもっていくかですが
新:えっやめさせるんですか
議:より夢中になられることを見つけていただくのです
新:いや言い方はいいんですけど
 いいじゃないですかカバディ。珍しくて面白そうで
議:まあ絵面の問題というか。想像してみてください
 もしニュースなどで紹介される映像で皇族がカバディカバディ言ってたら、
 なんかイヤでしょう
新:すごいふわっとしたディスり
 でも異文化の尊重は大事ですよ、文化に優劣つけるんですか
議:文化に優劣はない、けどじゃあたとえば殿下が
 スケボーやブレイクダンスをやりたいとおっしゃったらどう思います
新:・・
 それはなんかイヤ
議:ほら!いっしょ!
 やはりテニスなどがですね、優雅な紳士淑女のスポーツで、
 対戦相手との接触もない理想形と言えます
 巷にはテニプリという言葉もありますし
新:いわばテニスの皇太子様ですね
議:皇太子殿下とお呼びしなさい
新:失礼いたしました
 でも自由に選べないというのはおかわいそうです。
 というか他はどのへんが許容なんですか
議:どのへん、というと
新:たとえば卓球だったらセーフでしょうか、テーブルテニスだし
議:卓球はエレガントじゃないからダメです

(ダメ!)

新:※個人の見解です
議:他を挙げると定番のところで乗馬や・・弓系など
新:弓道とアーチェリー括りましたね
 馬と弓がOKなら合わせてあれもいけますか
議:ケンタウロス?
新:流鏑馬ですよ
議:ちょっと流鏑馬は危なそうだなあ
 そもそもあれってスポーツなの
新:危険と接触がなくてエレガントとなるとなかなか限られますね
 カーリングとかは?氷上のチェス、知的
議:なるほど安全かつ上品・・いやあのゴシゴシやるのはありか?
 う~ん
新:このへんが境界っぽいな
議:でも殿下がもぐもぐするお姿はきっと愛らしい、見たい
 許容とします

(異議なし!)

新:基準
 いやもぐもぐは公式ルールじゃないですよ。オプションです
議:次の議題は、殿下と御製について
新:御製、和歌ですね
議:皇族たるもの日本古来の文化である和歌は必須のたしなみです
 新しく作られた御製(おおみうた)がこちらに

 朝めしを食べたら街へ出かけようデュエルしようぜポケモンバトル

新:・・
議:実に趣深い

(すばらしい!)

議:お若い活力とお強い意志、そして個性に溢れたなんとすばらしいお歌ではありませんか
新:誉めて伸ばすスタイルなんですね
議:ただ和歌の講師はクビにしておきましょう

(異議なし!)

新:すばらしいのに?!
議:それは・・ほら、よく見るとデュエルとポケモンを混同してますし
新:そんな次元の問題だろうか
議:続いての議題は、殿下と漫画本について
新:おー漫画
議:お年頃を考慮する時期にきていることは最初に述べたとおりです
 そこでこの度、いよいよ少年マガジンの解禁に踏み切りたいと思います

(ざわざわ)

議:皆さんどうか静粛に
新:マガジンNGだったんですか
 年齢制限とかない本なのに
議:マガジンは比較的こう・・枠にとらわれない節があります
新:言葉を選んだ
議:そろそろいろんなものを受け止められる段階ということで
 テクモのきわどいゲームも思い切って解禁しましょう

(解禁!)

新:そういうカテゴリか
議:あと解禁といえばポルノ雑誌のご提供も開始してまいります。
 雑誌の種類なんですが――
新:ちょ、異議、異議です
議:どうしました
新:ちょっと待ってください。おかしいです
 一体どうなってんですかエロの基準
議:あ、いやこれは違うんですよ
新:そんなテンプレートな
議:ルートが違いまして
 先ほどのは公式にお渡しするやつで、こちらはお庭に捨てておくやつです
新:庭に捨てる?
議:よろしいですか
 性教育とは教科書で学んでもなかなかピンと来ないもの
 そこで我々一般人は大人の目を盗み、川原で拾ったエロ本で学習する訳です
新:ちょいちょい情報が古いな
議:しかし皇族方はそうはいかない
 皇居にエロ本捨ててく輩はいませんからね
新:確かに
議:なので我々がいい感じの本を見繕って庭園に置いておいて
 お気づきになった殿下がこっそり持っていかれるという寸法で
新:そんなシステムが
議:柔軟にサポートするのがお仕事です
 で置いとく本がですね、ばんがいち、ポプリクラブやLOあたりでいかがでしょう
新:だから情報が古いよ
 いやエロ漫画ばっかじゃねーか!どういう育成計画なんですか一体
議:やはり実写は生々しくてよくない、二次元こそ至高

(異議なし!)

新:メンバーに偏りがありすぎる・・
 あとLOはどうかと思います
議:最後の議題は、殿下と反抗期について
新:え、反抗期でいらっしゃるんですか。それは意外な
議:いえ逆です、円満でまったく反抗の兆しもない
 なぜなら天皇陛下の人格があまりにすばらしく非の打ち所がないからです
新:確かに
 それなら何の問題もないのでは
議:人生は山あり谷ありです
 多くの一般人と同様親と対立し衝突する経験がきっと豊かな人間性を育む・・
 大変心苦しくはありますが
新:なるほど通過儀礼ですね
議:ここは何か親子げんかの火種がほしいところ
 ちょうど先ほどのアホみたいな御製があるので、
 これを陛下にディスっていただいて険悪な雰囲気を作っていきましょう
新:こら、すばらしいお歌じゃなかったんかい

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作者コメント

興味を誘う一方わからないままの方がいい気もする世界
オーロラの舞う瞳なら神秘のままでいいのです

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