『Twelve Y.O.』

福井晴敏は亡国のイージス以来です
商業的にはこれがデビュー作(江戸川乱歩賞受賞)で
なのに(受賞逃して)世に出てない『川の深さは』の続編的位置づけにあることが
多少物議を醸したようですが
盛り沢山の満腹感の意味でも難解さの意味でも全然気になりませんでしたw

優秀なテロリストを台風の目にして自衛隊や米軍が動く大きな事件を
それぞれの個人的な感情がもたらしてる構図は面白い
読者の気持ちがかなり入りやすくなります

特に主要キャラの1人である平は
ヘリの操縦能力が高かった点を除いてとても一般人的で
成り行きで自衛官になって今は絶賛さえないおっさんの彼が
陰謀に巻き込まれ読者に視点を提供してくれる役割は大きい

この日常世界から国家の根幹に発展する感じに加え
情報局員の由梨のポジションや造形、理解ある上司がいて機密にアクセスする展開は
EVEバーストエラーをものすごく彷彿とさせます
影響受けてないとしても剣乃とクリエイター属性が近いんでしょうね

現実の国防の状況を土台にして問題を投げかけつつ様々な立場の人間のドラマを魅せる
これぞ一流の作家の仕事です

秘密裏に訓練された最強の少年少女やそこに生まれる情となるともう現実感わかなくて
エンジェルハート読んだときは没入しづらかったんですが
今回は活字だからか案外スムーズにいけました

一方複雑な組織や戦闘機・兵器・ウィルス等の描写はめちゃくちゃ読みづらい
ここは圧倒的に映像に分があるかと
シニカルな形容表現が過剰なこともあって
読書ガチ勢以外にはなかなかハードな一冊です。

タイトルとURLをコピーしました